UMINY: ドキドキ

5/31/2009

ドキドキ


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わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。

またわたくしは、はたけや森のなかで、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。

わたくしは、そういうきれいなたべものや、きものをすきです。

これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野原や鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。

ほんとうに、かしわばやしの青い夕方をひとりで通りかかったり、11月の山の風のなかに、ふるえながらたったりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということをわたくしはそのとおり書いたまでです。

ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでしょうし、ただそれっきりのところもあるでしょうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、そんなところはわたくしにもまた、わけがわからないのです。

けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。

宮沢賢治

『注文の多い料理店』序文全文

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心臓がバクバクしました。

7 comments:

テツヲ said...

散歩する行為の代わりに賢治を読むことがよくあります。それはやはり散歩と同じように、己の代謝の一部だからなんだと感じています。日本人に生まれたことに感謝。

mysweetkitchen said...

わたしがようやくこつこつ拾い集めた「大切なこと」を、あたかも当たり前のように、それが既に周知のことであるかのように「わかっている」、そんな文章に出会って心臓がバクバクしました。

心と体はやはり繋がっているのですね。

cherie said...

umiさんこんばんは。
賢治の物語、言葉ってなんだかいつだって哀しい感じがするのってなんでだろう。
私は野鳥観察が趣味なのだけど、まだ見た事のないヨタカという鳥を調べていてそういえば「よだかの星」読んだ事ないなと思って読んでみたら泣けてきた。
「銀河鉄道の夜」のアニメ版映画(ジョバンニ達を猫で描いている)も大好きです。細野晴臣のサントラがすっごくいいので機会があったら見てみて〜

テツヲ said...

うん。ココロとカラダはつながっているし、だからやっぱり、ヒトとヒトも、繋がっているんだと思います。

mysweetkitchen said...

cherieさん、
確かに、綴られた言葉の中に哀しさが感じとれるところもあるよね。

『これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野原や鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。』

きっと宮沢賢治という人の中に、こういった物語は本当にあって、そういった出来事を心のおもむくままに書きつけていったのかなあと思います。人間の感情だから、そこには「哀しさ」はもちろんあるし、おもしろさ、こっけいさ、死生観も見てとれるのかなあ、と。

こないだちょうど友だちと細野晴臣のことを話してたとこだったの!そのアニメ版映画まだ観たことないので、今度観てみます〜

brooklyn bug said...

umi さん

コンニチハ、
ドキドキドキドキ、
ココロ踊り、
情景がここに、
何回出逢えても、心臓爆発寸前ですね、
今日こうして、umi さんのところで出会えた宮沢賢治、
また新たな風を感じました、アリガトウゴザイマス。

おいしいメキシカンとお散歩☆
心とカラダの栄養補給、大切な事ですね、
ちゃ〜っと小走りに、ドコかへ行きたくなりました。

うん、素敵な一日になりそうです、アリガトウ。

mysweetkitchen said...

Brooklyn Bugさん、

こんばんは。

そういえば宮沢賢治の物語には「風」がたくさん吹いていますね。「風」についてもいろいろと思うところがあります。

今日は素敵な日でしたでしょうか?きっと明日もすこぶるよい日になりますように。

こちらこそ、アリガトウゴザイマス。